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============================================ 「先輩、先輩大変ですっ!祝がいません、それから、血が」
「なんだと?」
祝を探して走り出しながら、武東は渡良部に急いで電話をかけた。
「猫もいません。もしかしたら、」
「わかった。言わなくていい。とにかく祝を捜せ。捕まえろ。それからだ。」
幸いにも少ない言葉で渡良部は武東の言わんとするところを理解してくれた。
武東は察してくれた渡良部に感謝する。
誰だって、こんな結末、言いたくない。認めたくない。
「ありがとうございます、じゃ、」
「おう。」
電話を切り、前を向く。
――と。
視界の隅に、コソコソと道を行く男が映った。
まさかと思いつつその男を目で追って、武東は心の中でアッと叫ぶ。
写真の男。祝 盛次だ。
「ちょ、おまえ、」
「ッ!オマワリ!!」
武東が動くよりも、祝が叫ぶ方が一瞬早かった。
何故バレた?と思い、そういえば自分は制服姿なのだという事を思い出すのに一瞬かかる。
その間に祝はもう背中を見せて走り出していた。
「あ、待てっ!」
言って待つ訳が無いことは十分に承知しているのに、やはり言ってしまうのは何故だろう。走り出しながら武東は考える。
それにしても、祝の足は意外にも速かった。だが、武東だって負けてはいない。
本当に新人の時代には、とにかく万引きを追いかけ、食い逃げを追いかけ、家で少年を追い、走り回りまくり、捕まえまくり、とにかくそういう時代だったのだ。
走ることで負けるつもりは、毛頭ない。
それに、京花の怒りや哀しみ。
京花を悲しませたという、ただそのことが。祝への武東の怒りが、足に力を加える。
あの悲しげな顔が、微笑んでくれるのを見るために、そのために頑張ったというのに。
――全部全部、台無しじゃないか!
「祝ィ!!」
武東は思い切り叫んで地を蹴った。
伸ばした右手が、祝の左手に、届く。
「ギャ!!」
その左手を思い切り掴むと、一瞬祝がひるんだ。その隙を逃さず、武東は一気に身体を詰める。
引き寄せて、掴んで、背負い投げ。ドサリと祝の身体が、アスファルトに落ちた。
やっと、ようやく、捕まえた。
「祝、盛次、だな!」
そう確認すると、武東の下で、祝はがくりと頷いた。
それを見て、武東は携帯電話を取り出す。
「もしもし、先輩ですか……」
こんな、こんな結末を待っていたわけではなかった。
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