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俺は、掘っていた。
地面を、掘っていた。
雲一つない空にどっかり居座る太陽が、じりじりと肌を灼いていく。
ゴウンゴウンと重たい機械の音が唸っている。
一年と半年。最初は一本のシャベルから始まった。
何もない、ひび割れた地面にシャベルを突き立てる。
ぼそぼそに乾いた土を、掬っては放り、放っては掬う。
シャベルで間に合わなくなったら、今度は機械を入れた。その機械だって最初はそんなに大きくなかった。
穴が大きく深くなるに従って、機械は大きくなった。
今。
穴は底が見えない。巨大な機械の先端がどれほど深く地中を進んでいるのか、想像する事すら困難だ。
叶う事ならば、自分自身の力で最後の一瞬を掘り進めたかった。だがこれほどの深さになれば、機械に頼るしかない。分かりきったことではある。
だから俺は、一日中、待つしかなかった。
古代の遺跡から発掘された古文書の記述。それを解読し、俺はこの場所を突き止めた。
もうすぐだ。きっと、もうすぐだ。
首筋を、背中を、全身を、不快な汗が流れていく。だがそれも、希望の瞬間を思えば些細な事だ。
じりじりと、焦燥に駆られながら俺は待つ。
重たく唸っていた機械の、様子が変わった。
ゲージがグリーンからレッドに光る。
甲高い警告音が鳴り響く。
「――るぞ」
カラカラに渇いた喉からひび割れた声が零れる。
「くるぞ……くるぞ……」
呟きは、やがて雄叫びに変わった。
「くるぞッ、くるぞっっ!!、くるぞぉぉぉぉッッッ!!!!!」
ドクン、と鼓動が一つ。それは、俺のものか、それともこの地面のものか。
渇望していたものは、やって来た。
何千年、何万年、深い地中で眠る生き物の死体から精製されたもの。
長い永い時をかけ、その死体は非常に貴重なものへと形を変えた。
石油、というもの。
俺がこの場所を手に入れるきっかけである古文書が書かれた時代においても、石油は貴重だったことが分かっている。
これまでの巨額の投資が報われたその瞬間、俺は拳を突き上げ、あの古文書に出会ったあの日の俺を讃えた。


それは遠い遠い、思いを馳せる事すらままならないほどの昔。
疫病の流行により大量に処分された家畜が、まさにこの場所に埋められた。

かつてこの場所がニホン、と呼ばれていた頃の事だ。



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例のあの家畜の疫病のニュースを見ていてふと。
ていうか、14年連れ添った牛を……っっ
やるせなさで泣きそうになった。仕方のないことかもしれないけど、非情だ。
人間が死ぬよりも、動物が死ぬことの方が、余程痛い。
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